として

傍に居てこの心地好さに浸っていたいだけなのだ

 前々から腕や肩、首が細いと思っていた。男にしては肉の付き具合がどうも女と変わらん気がして、でも男の私でも格好良いなあと時折思わせる仕草に、私は特に気にしなかった。触れれば柔らかくて気持ち良くて、黙っていれば女なのではと思う程に美しくも見える。酒が入れば私は栢丸を女として見てしまいそうになって、口吸ってみたいと思ったり、抱いてみたいとも思ってしまう。男だけど、まあ良いかなと思ってしまうのだ。
 秋休みに入って仙蔵の想い人とやらの家に押し掛けた時、女の姿をした栢丸が居ると思った。仙蔵はみつねと口にしたが、私の耳には入らなかった。栢丸だと、私には分かった。女らしく花の様に笑い、あの細い腕や肩が揺れる度に目が奪われた。女の姿をした栢丸がとても可愛らしくて。女装――乙女の時も女そのものだと思ったが、やはり時折男らしい面を見せるものだからあまり感じなかったが、女そのものの姿の栢丸に私は目が釘付けになった。見惚れたのだ。
 だが、栢丸はみつねである事を隠したがっている。そもそも、女であるという事を知られたくないらしい。仙蔵に「仙蔵さんが皆さんを連れてきたから」と拗ねた面を見せる度に、そんなに女として私達の目の前に出たくないのかと、私は栢丸がみつねだと知って嬉しいと思っているのに栢丸はそれを嬉しくないと言うのかと、心苦しくも思った。「栢丸だろう」と口にすれば途端に関係が壊れてしまいそうで。男として私と友になり、男として大川学園を卒業したいのだろうという思いに私は知らぬ存ぜぬを決め込んだ。唯、みつねである時は何時も以上に触れたいと思ってしまう様で、五月蝿く鳴る胸音に心地好さを覚えながらも隙あらばと近寄った。栢丸である時も友として隣に居たいと思ったから何食わぬ顔で傍に居た。無論、栢丸に私が気付いているという事を悟らせない様にみつねのあの藤の簪を探している振りもした。だが、私も男だ。栢丸の友でもあるが、他の男と居る栢丸は見たくない。だから友という立場を利用して触れようとした。藤の簪など、どうでも良い。男であると言い警戒する栢丸から奪おうだなんて、容易くはないと知れている。ならば、誰に奪われる事も無いだろうし。探す暇があるのなら私は栢丸と共に居る時間にする。その方が断然良い。

「小平太、お前……知っているんだろう」

 伊作は勘付いている。むしろ、此処で「ああ、知っている」と口にしても良い気もする。だが、私はしない。

「何の事だ? さっぱり分からんな」

 だって、栢丸は知られたくないのだろう。男として居たいのだろう。私の友として。ならば、「知っている」だなんて口に出来るわけがないじゃないか。私は栢丸の友なのだから。