ざるを得ない

後悔せざるを得ない、けれど、何にだろうか

 絶句した。蝋が灯す小さな仄暗い明かりに映る紙面の墨の字に、私は仙蔵が涙した理由を知った。これは泣いてしまうかもしれない。確かに、便りが無ければ仙蔵の恋も終わったと思えよう。読み進める度に私は仙蔵に対してとても申し訳無い気持ちを胸内に積んでいく。
 内容はこうだ。季節の挨拶に始まり、大川学園での生活についていろいろと書かれている。その次に、次の休みにでも会わないかという誘いの文面が綴られていた。そう。まるで、兵太夫と同じ。でも、兵太夫と違うのは、仙蔵らしい配慮と男らしさが含まれたもの。

「どう……返事すれば良い、かな。これは」

 男を泣かした事は幾度もある。それも拳で。けれど、仙蔵を泣かした事など生まれて始めての事で、厄介だとか煩いだとか、色々と思っていた私は、今になって仙蔵にもっと優しくすれば良かったかもしれないと思ってしまう。仙蔵の気持ちは本物――なのかなあ。でも、恐らく、本物なんだと思う。
 文面に書かれた次の休み――というのは、今日の事。仙蔵からしてみれば、「俺よりも弟の方が大事だと言うのか! 俺はどうでも良いと言うのか!」と責め立てそうなくらいの憤りを感じて居るだろうなあ。あ、次の作法委員会の時に兵太夫が苛められないか、心配になってきた。これは私の所為だから、何としてでも早く仙蔵の怒り――というよりも、悲しみかな――を和らげないといけない。さて、どうしようか。

「何か悩んでいるのか、栢丸」
「へ――へええええぇー!?」

 背後から聞こえてきた声に、私は変な声で叫んでしまった。睨めっこしていた文をくしゃくしゃに胸元へ入れ込み振り返ると、長身の影――長次が居た。何で、何で、何で此処を開けた。隣、空いているじゃない。どうして、人が入っている個室の戸を開けてしまうのかな、この人。

「厠では――」
「し、静かにだろ! じゃなくて、何で長次が、私が入っているというのに、開けたの、戸を!」
「声が聞こえたからだ」
「う゛」

 声が聞こえたなら普通、気配を消して知らない振りするものだと思うけれど、目の前に憚る長次は私の了承も無く戸を開けて来た。もし、私が用を足していたらどうするんだ。ま、まさか――両刀だなんて言わないよね、長次。

「返事がどうと聞こえた」
「……さ、然様です。でも、何でも無い、その――大した事では無いから」
「仙蔵に返事する事が大した事では無いと言うのか」

 長次の口から淡々と発された言葉に、私は固まった。何で、知ってる、の。

「……すまない。鎌掛けなどするものではなかった」

 口元に手を宛がい目を伏せる長次に、私は何も言えなかった。知られた。私がみつねである事を、長次は知って――いや、察していたのかもしれない。だから、確かめる為に、私に鎌を掛けて。

「約束する」

 失望しただろうか。怖くて、怖くて、私は長次の目を見る事が出来なかった。

「俺は、今知った事を誰にも話さない」

 仄暗い視界が真っ暗になった。