罰みたいな刹那
彼女は叔父であるバイロンの娘であり、ジョシュアにとって唯一の従姉にあたる。叔父の豪快な性格を受け継ぐことはなかったが、思い切りの良さと寛大な心は父親譲りと言って良い程に、彼女は前向きな女性だ。
だから、ふとした拍子に魔が差す。
トルガルにぎゅっと抱き着いて、深い毛並みに頬を埋めて幸せそうな笑みを見せる彼女に、ジョシュアは指先を近付けた。
「ねえ」
「なあに?」
トルガルに張り付いたままの彼女が振り向いた瞬間に、ジョシュアの指が彼女の耳に触れ、掛かる髪を梳き撫でる。瞬間、彼女の幸せそうな表情が一瞬強張りを見せ、止まる。何でもないことのように装うには遅くて、気があると前面に出すには準備不足だったが。
「ジョ、シュア……?」
「可愛いと思って」
「トルガルが?」
「君がだよ」
みるみる赤らんでいく彼女の顔は嫌というわけでもなさそうで、ジョシュアは満足そうに彼女の耳を弄り撫でた。
(20230725)