塔の外にあるものは、何もかもが新鮮に見えた。毎朝、そして毎晩見る代り映えの無い室の窓。そこから見える景色はいつだって同じもの一つとしてない。星空ですら同じ位置にいない。だから、外の世界には僕の知らないものがたくさんあって、僕の胸をわくわくさせてくれるのだろうと信じていた。
「ごめんね、カムイ」
白夜王国に着いて、姉さんは僕に泣きそうな面を見せた。何時だって笑顔で、時に厳しい時もあったけど、それでも姉さんが泣いたところなんて一度だって見たことがなかった。そんな姉さんが、僕に今にも泣きだしそうな目を向けてくる。
「どうしてあげれば良かったのか、今でも分からない……けど……ここに居る人達は皆、貴方の帰りをずっと待っていたことは本当のことだから」
僕が白夜王国の第二王子で、姉さんは今は亡きコウガ公国の公女なのだと聞かされた。だから、姉ではないのだと言う。姉さんも、暗夜王国に居るマークス兄さん、カミラ姉さん、レオン、エリーゼも、皆は僕の兄弟ではないのだと。
「それでも僕は、姉さんは僕の姉さんだと思っているよ。血は繋がらなくても過ごした時間に偽りはないでしょ」
それでも姉さんが笑うことはなかった。姉さんの涙を止められなかった。姉さんの立場を僕はちゃんと理解出来ていなかったから、どんな言葉を姉さんに捧げても、姉さんは僕に「ごめんね」と言い続ける。
塔の外にあるものは、何もかもが新鮮だった。けど、それは必ずしも嬉しいものばかりではなかった。
(20161107 - 20221106)