反芻する愛情は


 見られることには慣れている。誰の視線であるかは見るまでは分からないものだけど、あの子であれば良いなと思う時は大抵あの子が俺を見ていた。振り返って姿を見付ければ途端に目を逸らされて、浮かない情を見せる面がどこか幼く可愛いなと思わせる。出会った時はお互い幼いものだったけど、日を増すごとに女の子から女性へと成長する様は見ていて楽しいものだ。君はどこまで美しくなるのだろう。そんな俺の密やかな気持ちを知られまいと、欲しくないであろう言葉をつい口にしてしまう。

「その紅、新しいのだね。父上が差していた紅と同じ色合いだ」
「そう……なんですか」

 残念な気持ちにさせているというのに――何故だろう。とても楽しく思う。微笑ましいほどに頬の綻びを隠せないでいた面が一瞬にして固まり、口を一文字にしてちょっと冷めた視線で見上げてくる。それがまた良い。

「似合うね」

 追い打ち立てる俺に愛想を尽かしたのか彼女は言葉少なで離れて行ってしまったけれど、普段と違って足音が少し荒めのがまた楽しいと思ってしまう。

「やめられないんだよな、こういうの」

 紅を差して向かう実習だと聞かなければここまでしなかっただろうけどね。