勝手世界


 金銭感覚の違いは致し方のない事。育った環境が違えば価値観も違う。
 店のショーウィンドウに置かれたピンクパールのピアスが気になって、少しの間、見入ってしまった。私の背後からエドガーの影が覗いてきて、もうそろそろ戻ろうかと思い振り返れば、彼は何も言わずに店の戸を開け入ってしまった。出てきた時には片手に小さな箱を携えて「欲しいのなら私にきちんとねだるように」だなんて得意気に言うものだから、エドガーの手の上の小さな箱を奪っては店主に戻してきた。

「男の顔を潰すのが趣味なのかい?」
「欲しいだなんて一言も言ってないわよ」

 素直に受け取れるわけがない。ガラス越しに見えた値札はかなりのものだったのだから。でも、嬉しいと思ってしまう心は偽れなくて、恥ずかしさに歪む顔を見られまいと、私は先を歩き出した。

「ほう」
「何かしら」
「俺の好意を無下にしたのは、そういうことか」

 エドガーの言葉が癪に障る。眉間に皺を寄せたままの私は振り返って「分かったような口、利かないで」と吐き捨てる筈が、唇にエドガーの長い指が宛てられて言葉を発せず。

「ルビアのそんな顔を見れるのは俺だけだということだよ」

 捨てきれなかった恥ずかしさが私の胸内を締め上げた。