理性と欲望 b


 上睫毛よりも下睫毛の方が長い。ふっくらした唇は以外にも小さめ。見詰めれば見詰める程、彼女の知らない部分を一つまた一つと知る。瞼掛かる朱い髪を軽く払えば小さく身じろぎする。くぐもった寝息が微かにアガンの唇を掠めた気がした。

「こー……なんつーか」

 アガンの膝を占拠するは彼女の頭。仰向く彼女を見下ろすアガンは何とも遣りきれない気持ちに駆られていた。

 跳ね退かしたい。若しくは投げ飛ばしたい。だが、気持ち良さそうに寝るものだから思わず頭を撫でたくなる。頬を突くのも良いかもしれない。唇はどれくらい柔らかいのだろうか。舌で舐めとってみたくなる。というよりも、正直なところキスしたい。これが本音。
 彼女の狼耳の手前に人差し指を用意して時折ぴくんと跳ね当たるのを楽しむだけに何とか留めているものを、無防備にも目の前で寝入られてしまうと留めているものが溢れてしまいそうになる。そもそも、少しでも気になる異性が下半身に触れているのだから、熱く感じない事など無いに等しい。

「っ!!」

 突如寝返り打つ彼女の頬が固くなりつつある熱に当たった。

「っの、馬鹿! 起きろ! 限界だっての!」
「ん……」

 膝から押し出すように彼女を叩き起こすとアガンは早速とその場を離れた。