理性と欲望 a


 シンオウ地方の夜は冷えるからと、添い合い寝る事にしたのだが、間違いだったと認めなければならない。心内は彼女に触れる事が出来ると嬉しさで満たされていたのだが、そう思っていたのも束の間。

「……眠れない」

 疲れが溜まっていたのであろう肩を並べ寝る彼女は、健やかながら笑みを見せるというのに、シゲルの眉間は皺を増すばかりだった。

「ブラッキぃ、スピカぁ……むぅ」
「……僕は、シゲルだ」
「ふふっ……擽ったぃよ……」
「まだ、何もしてないんだけど」

 貴重な睡眠時間が刻々と削られ、至福な時も己の欲を抑制するという事に気を取られ、思う存分に噛み締められないで居る。
 我慢ならず、半身起こし彼女の幸せそうな寝顔を覗き見入る。触れれば柔らかい唇に指の腹を宛がいながら、起きもしない相手にシゲルは小さく笑った。

「あんまり寝言ばかり言ってると、ちゅーして塞いじゃうぞ?」
「んむぅ」
「うん?」

 何だかんだと言いつつも、やはり彼女の寝言に耳を寄せてしまう。何か呟くのかと暫し待ってみれば。

「シゲルぅ……めっ」
「っ」

 小さく眉を寄せ眠りの中のシゲルに駄目という彼女に、シゲルは緩みそうになる口元を抑えつつ、代わりに溜め息を吐いた。

「めっ……なのは、君だろ」