彼は若く見えて、実は結構爺臭い。そんなふうに思っているという事は勿論の事、秘密である。言えば怒って口煩くなる。そんなところは外見通りに見えて、言っている内容はやっぱり爺むさくなるのだけれど。私はそんな彼――ヤナフさんの経験豊富なお説教臭いところが好きだったりする。

「おい、聞いてるか?」
「うん、聞いてますよ。ちゃんと」

 今、私はヤナフさんの長い髪の毛を梳かしている。少しくせのある髪に見えるのだが、実際に触れてみると櫛の意味が無いほどに真っ直ぐだ。そして、羨ましいほどにふわりと心地好い触り具合。

「あんまり緩めるなよ? ちゃんときつく縛ってくれ」
「分かってますって。ほらほら、ヤナフさん、前向いて」
「この間やってもらった時、風負けしちまったんだからなー」
「でも、髪下ろしてるヤナフさんも良いですよね」

 途端に黙り込む。見た目は少年と青年の狭間。けれど、中身はお爺ちゃん。そんなヤナフさんは、時に年頃の青年の反応をしてくれる。

「ばっ……髪下ろしてたら、邪魔になるだろが」
「じゃあ、いろんな髪型試してみませんか? こーんな風にお下げとかっ」
「だっ、やめろっ! お前、人の髪で遊ぶな!」
「でも、こんな感じに後ろ一つで纏めると格好良いですよ? ほら!」
「――っ! ……好きにしろっ」
「はーい」

 大人なヤナフさんは、子供な私を避ける事無く受け止めてくれる。時に爺むさく見え、時に可愛い少年に戻るけれど、今のヤナフさんは少し余裕があるようで、私に隠れて微笑しているみたいで肩が少し揺れている。

「また、遊ばせてくださいね、ヤナフ先輩」
「おう。また付き合ってやるよ」