「あ、これは――」

 白き翼の羽の音。そっと耳を澄ませば一音で瞬時に分かる、見目麗しき種族。鷹は力強く羽ばたき、鴉は無駄無く羽ばたく。気高く上品な羽ばたきは白の民。羽音一つで誰が近くに居るのか分かるほど、レムの耳は彼の羽音を覚えてしまっていた。

「こんにちは、王子。今日は気分が良さそうですね」
「ああ。頗る良い。今日は空模様が美しいからな」

 綺麗な弧を描いて降り立った白の王子は、名残惜しそうに空を見上げる。

「伸び伸びと泳いでましたね」
「とても気持ち良い日だ。負の気も昨日よりかは遠くに感じる」
「天気って」
「何だ?」

 白の王子の顔を見て、ふと思う。

「気持ちをも左右させるんですね」

 血の匂いに染まったレムに近付く事に、度々気分を悪くさせていた白の王子が、天候の良い今日に限ってとてもにこやかな表情を向けてくるのだから。

「天気の魔法に掛けられてしまいましたね、王子?」
「魔法か……そうかもしれないな」

 優しい風が白の王子の頬を撫ぜる。金の髪を風に遊ばせてやりながら、白の王子は再び空へと微笑んだ。