「そこのお兄ぃさんっ」
「ん? 俺か?」
「そうそう、そこのベルガー商会の御曹子様」
「何ぃっ!?」
振り返り見てみれば、自分より頭一つ分以上低い華奢な少女が立っていた。その少女はにこりと笑みながら、眼と声は笑っておらず。ベルガー商会の御曹子と言われたガイツに緊迫感を強制的に持たせた。
「何でお前みてぇなガキが俺の素性を知ってんだ……」
「こう見えても私、二十代なんだけど……ま、いいか」
「俺の質問に答えやがれ――って、お前、今、二十代とか言ったか……?」
「うん言ったよ。でね、今日はガイツさんにお願いがあって来たの」
初めて会うはずなのに、ずかずかと慣れ親しくいり込んで来る少女。いや、女性と言うべきか。事実、黙っていれば女性とも見れる端麗な顔立ちなのだから。
「この軍にカレルさんという人が居るのだけど、今後はその人と組んで戦ってね。それじゃ」
「誰だ、そのカレルって奴……男か?」
「通称『剣魔』って呼ばれる男性よ。切り殺されないように十分注意してね」
「そんな奴と組めって言うのか!? って、おい! 何で俺がお前の言う事聞かなきゃなんねーんだよ! つーか、その前にお前は誰だ!?」
言うだけ言って早々と去ろうとするその華奢な背に叫んだ。一方的な流れに、抗えなかった自分に不思議と戸惑う。
「私?」
「そう! てめぇだ!」
「私は――」
風に煽られながらも振り向くその姿はどこか気品溢れていて、誰にも止められない自信さえ窺える。
「この軍の軍師よ。今後ともよろしくね、ガイツ」
にっこり笑って大人の顔をするその軍師に、ガイツは言葉を見失い顔が熱くなるのを感じた。
(20070111)