「はい。これでもう大丈夫よ」

 相棒不在の者達が集う、天幕から数歩離れた場所は水辺。馬や天馬の状態を見回っていたペリネットはいつの間にか絡んでいた手綱を直し、目の前の厳つい顔した飛竜へと微笑んだ。

「あなたの相棒さんはミレディ? それともこの間入ってきたばかりの人かしら?」

 大きな翼を伸ばし咽喉をくいっと上げ、ペリネットに首を寄せてきた。

「そう。新入りさんなのね」
「ルブレー!」

 鋭い声が背後から掛かった。何事かと振り返れば、肉を木箱に積み抱える青年が走り寄ってきた。

「この子、ルブレーって言うの?」
「え、あ、ああ……そうだが」

 何か言われる前に質問する事で、彼の口を黙らせた。きっと、彼には悪者か怖さ知らずかに見えたのだろう。

「鱗に手綱が絡んでいたから直してあげてただけよ。そう、警戒しないで」

 ルブレーの鼻の背を撫でてから、ペリネットはその場を離れる事にした。居座っては邪魔なだけで、余計な気遣いをさせてしまう。去り際にルブレーの相棒らしき青年ににこりと笑みを向け、ペリネットは天幕の方へと足を向けた。

「あの、俺はツァイスです。貴女の名前は……」
「私はペリネットよ」

 ふわりと髪を靡かせて振り向いた微笑に、ツァイスは固まった。次第に遠くなっていく背を呆然と見送っていたツァイスは、ルブレーの嘶きに我を取り戻す。

「悪い、ルブレー。先に食べてろ」

 ルブレーの好物である肉を目の前に置き、ツァイスはお礼を言い逃がしてしまった事に焦り、ペリネットの姿を探す為に走り出した。