私は一度もセインにナンパされた事が無い。
「――というわけなのです。俺はどうしたら……」
「人妻に手を出すのは流石に駄目でしょう……」
「レネアさんもそう思いますかっ!? ああっ、俺は一体どうしたら……」
相談に乗る事は多々あっても、決して彼の口から私への想いは語られない。それは、私を女として見ていないという事なのだろうか、それとも彼にとって私は好みのタイプでは無いという事なのだろうか。何故か考えてしまう。もしかして、私はセインにナンパされたいと想っているのだろうか。
「告白して自滅するか、思い留まるかの二手道だね」
「そんな、あっさりと! この蟠りを和らげる方法を教えて下さい! レネアさんっ!」
否、絶対にナンパされても首を縦には頷く事は出来ない。私は移り症なセインを好きになれる程お人好しではない。だったら、どうしてこんなにも気になるんだろう。
「当たって砕けろ、だよ」
「砕けたら意味が無いですよ!」
ああ、そうだ。私はきっと、妬いているんだ。
「じゃあ、夫さんから奥さんを奪うか、奥さんから夫さんを奪うかだね」
「どど、どういう意味なんですか?」
「だから、奥さんを手篭めにするか、夫さんを亡き者にするかだよ」
「そんな事したら、俺は確実に嫌われてしまうじゃないですかっ!」
「ははは、そうだねぇ」
キリっとしたり、弱々しい姿を見せるセインが小憎たらしいと思う。他の女性には男の顔をするくせに、私には子供っぽい表情しか見せてくれないから。
「セイン、好きになる前にやらなきゃいけない事があると思うよ」
「何をですか?」
きょとんと振り向くセインの頬を、満面の笑みを浮かべながら思いっ切り叩いてやった。
「コロコロと惹かれるなって事」
そんな子供っぽいセインが可愛くて、毎度面倒を見てしまう私も反省するべきかなと思ってもみたり。
(20060625)