ここは呼吸をするところ after



※スノウの親愛ストーリー「望んだ代償」を含むお話です。ご注意ください。

 夕食に顔を出した彼の顔はどこか寂し気で、でも彼の前ということもあって嬉しそうな顔をしていた。何の事情も知らない魔法使いたちからすれば、彼と彼はいつもと変わらない様子に見えるだろう。いつもの双子。そう見えるはずだ。

「賢者」
「プリネス」

 スノウとホワイトの持つ母さまと父さまの人形の間に座らされた賢者にプリネスは一つ声を掛ける。振り向く賢者の顔を見下ろしながら、プリネスは普段よりも幾分も穏やかな顔をした賢者の前髪に触れ、そしてその頭を愛おしく撫でる。賢者のテーブルには次々と美味しい匂いを漂わせた料理が並べられていくが、突然のことに固まる賢者はその匂いにすら気付かず、ただプリネスの手の優しさとプリネスの嬉しそうな微笑みに釘付けになっていた。

「あの、プリネス?」
「今日、ずっとスノウと一緒に居てくれたんでしょう」
「はい、居ましたけど……」
「君の顔がとても優しくて、嬉しくてね。ありがとう」

 前の賢者であればきっと関りすらしなかっただろう。今の賢者は魔法舎の魔法使いたちをよく見ている。そして、落ち込んでいたはずのスノウと共に居て、ホワイトを前にして複雑な顔などせず、むしろ二人を見守り穏やかな顔をしているのだ。そのことがプリネスを愛おしく堪らなくさせた。

「これ、プリネス。賢者が可愛いからといって、いつまでもそこにおっては賢者が食べられんじゃろう」
「そなたはこっちに来て、賢者の向かいに座ると良い。我とスノウが隣に座ってやるぞ」
「賢者の顔を見ながら両手に花だなんて、特別な席だね」
「「我らお花だって。きゃっきゃっ」」

 気を良くする双子を余所に、プリネスは屈み賢者の耳元でそっと。

「何代か前の賢者は二人に内緒でよく両脇に毒蜂がいるって言っていたけれどね」
「そこは蜜蜂じゃないんですね……」

 と、二人でくすりと笑い合い、「「賢者ちゃん、プリネスちゃん、何のお話?」」と双子は顔をむすっとさせる。
 今日はとても楽しい夕食になりそうだと、プリネスも賢者も声に出して笑い合った。