狂うのはいつも僕の方

― 君が好きだから ―

 今朝は快晴だった。窓から見える空は清々しい程に開けたものだというのに、僕の今の気持ちはとても重い。
 また夢を見た。アスカを泣かせて、僕の欲情に縛り付けて、どこまでも追い詰める夢。悪夢だと分かるのに、けれど心のどこかで目覚めないで居たかったとも思う。
 アスカの前では決して言わないけど、僕はアスカの僕を感じながら泣くあの顔が好きだ。もっと僕を欲して、僕に感じて、僕だけに見せてくれる淫らな――それでいて可愛らしく綺麗な姿が、堪らなく愛しい。
 そんな心の声を拾う夢が、僕の理性を嘲笑う。優しく在りたい。アスカの嬉しそうな笑顔が好きだと言うのに。
 扉を叩く音にはっと顔を上げる。「おはようございます。アスカです」と朗らかなアスカの声に、僕の胸は罪悪感で焦りだす。いつもだ。僕が彼女に疚しい夢を見る日に限って、彼女は早朝に僕の部屋を訪れる。

「おはよう、アスカ。すまないけど、少し待っていてもらえるかな。今、起きたところなんだ」
「ごめんなさい! 早く来過ぎてしまいましたね……」
「いいや、謝ることはないよ。いつもなら僕も準備を済ませている頃だしね」
「あの、よろしければお手伝いしましょうか?」

 時々――いや、一日に何度かは思う。アスカは何でこうも軽々しく僕を試してくるのだろう。いつもなら思うことはあっても平静を装えるというのに、今日みたいな日は僕の理性も揺らいでしまう。

「……じゃあ、お願いしようかな」

 そもそも、男の部屋に気兼ねなく訪れることを許したのは僕だ。最初こそはアスクでの生活に不慣れなアスカに、文化や文字などを教える為に僕の部屋を使っていた。今も、分からないことがあれば僕のところに来てくれる。本の貸し出しもしているということもあって、ほぼ毎日、僕の部屋に来てくれている。
 だから、きっとアスカも油断しているのだろう。アスカのことが好きだということを知っていても、アスカを犯してアスカの全てを求める――そんな汚い夢を見ていることは知らない。
 だというのに。君は、アスカは僕を真っ直ぐな目で見てくる。

「ふふっ。本当ですね。寝ぐせ付いてる」

 扉を開けた途端に見せる笑顔が、眩しく見える。そうして、触れたいと思うこの手は、いつの間にかアスカの頬を優しく触れていて、僕を驚かす。僕は、やっぱり、アスカに優しく触れたいんだ。壊したくない。

「アスカが欲しい」

 今、欲しい。夢に見たアスカの泣き顔ではなく、僕に嬉しそうに感じてくれるそんなアスカの顔が見たくて、アスカの言葉を待ちながらその柔らかな唇をそっとなぞった。戸惑いを見せるも、恥ずかし気に赤らんだ頬でこくりと頷くアスカは本当に、可愛い。

「アスカ……」
「ぅんっ……アル、フォンス……」

 吸い付くように唇を啄むと、合間に聞こえるアスカの息遣いが僕の気持ちを高ぶらせる。強引に齧り付いて、呼吸を荒く攻め立てたい衝動に駆られ、僕は今朝見た夢を思い出しゾクっとした。ああ、駄目だ。僕は、夢に勝てないかもしれない。どこまで許されるか、試したい気持ちで興奮している。

「好きだよ、アスカ。好き、なんだ」

 いつもよりも余裕の無い僕をアスカはどう見るだろう。そんなことを考えながら、僕はアスカの両足を割って太腿を摺り上げた。扉に背を預けさせ、触れたくて堪らないその柔らかな胸をいつになく強引に鷲掴む。小さく悲鳴を上げたアスカを覗き見れば、頬を紅潮させて感じてるアスカの可愛らしい顔があった。

「アルフォンス……今日は、少し、強引ですね」
「……嫌?」
「嫌じゃ、ないです……ちょっと、新鮮です」

 そうやってまたアスカは僕を見上げて微笑む。だから、僕は本当に堪らなく――。

「アスカは僕を試してばかりだね」

 ほんのちょっと。もう少し。振り回しても良いかなって、理性が緩まるのを容認してしまいそうになるんだ。