今日も一段と暑い。汗流れる首筋に手をはたはたと風を送るも、暑さは益すばかり。空調の利いたポケモンセンターで涼んでいれば暑さを身に受ける事はなかっただろう。だが、連れが居なくなってしまったのだから、外へ探しに出なければならなくなる。
「迷子癖あんだから、ちょろちょろ居なくなんなっての。あー暑ぃ」
炎天下の中を並ぶ人々を目で追えば。
「アイス屋じゃん!」
オーソドックスにバニラが良いか。クッキー&クリームの、滑らかな舌触りの中に雑ざるクッキーの食感も捨て難い。
「でもやっぱ、チョコミントだな!」
爽やかなミントの味に甘いチョコが絡む絶妙な美味しさが堪らない。暑い中を立ち並ぶと云えど、アイスを思い浮かべれば時間さえ忘れてしまう。
お金と引き換えに手に受け取ったコーンの上に乗る涼しげな色合いに、ジュンは一口被り付いた。頭を貫く冷たさに眉を顰めるも、口に広がる美味しさに口元は笑んでしまう。
「ツキルにも教えてやらねーとな」
一人で食べるよりも、二人一緒で食べた方が美味しいに決まっている。溶けてゆくアイスを舌先で舐め取りながら、ジュンは迷子であろうツキルの姿を探した。ポケモンコーディネーターのトレーニングストリートでもある公園はとても緑豊かで、広々とした敷地に転々と在るホワイトカラーのベンチが一種のリゾート地に思わせる。
「お?」
木々に覆われ綺麗な木漏れ日を映すホワイトベンチに、迷子と思われていた彼女が居た。人気も少なく、微量の風が心地好い。一度、気になれば足先を変え進んで行くツキルであるからこそ、見付けられる穴場なのかもしれない。
「何やってんだよー、ツキル!」
涼むならポケモンセンターでも良かった筈だ。暑さを理由に一つ文句を言ってやろうと近付いてみれば。規則正しい小さな寝息を漏らしながら、心地良さそうに瞼を閉じているツキルに足が止まってしまった。長い睫毛に掛かる影や仄かに紅潮している頬に、思わず触れてしまいそうになる。
「罰金だ、こいつ……」
ツキルが何をした訳でもない。ただ、ツキルが寝ている所にジュンが立ち寄っただけの事。だが、反則だと叫びたくなる程に、ツキルの寝顔に胸が締め付けられたのも事実で。
「やべっ、溶けてんじゃんかよ」
手にしていたアイスに悪態吐きながら、指に掛かるアイスの軌跡を急ぎ舐めては被り付き、再び襲う冷たい痛みに頭を抱え込んだ。
「くっそ~。頭が痛ぇーっ! 何だってんだよ、もー! 人が頭痛い思いしてアイス食っているってのに、気持ち良さそうに暢気に寝やがって」
ジュンの叫びに何一つ反応しないツキルの額に、ジュンは空いている手で軽く小突いてみる。小さく漏れた声に少しだけ得意気に笑うと、ジュンはツキルに影を落とした。
振り回されてばかりいるからこそ、少しは見返してやりたいもの。目覚めと共に味わうチョコミントの甘さに、想いの丈を知れと、ジュンは満足気にツキルを見下ろした。